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エピソード18 街道を行く

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新しい年が明けました。
とは言ってもな~んも変わらない我々の日々であります。
いや、ちょっとした変化がありました。

我々がいつものドーナツショップへ向かう道路がある。別になんの変哲も無い府道だ。
その道路に”通り名”が存在することを最近になって知った。ビックリした。
人呼んで”ロマンチック街道”....う~~む...気絶するほど気恥ずかしい(by char)
誰が?いつ?なんで?そんな疑問が頭に渦巻く。センスがトホホである。
きっと沿道の商店、飲食店などが結託してデッチあげたのだろうが、
田舎の商店街によくある”○○銀座”と同レベルのカッチョ悪さだ。
通り名で呼ばれるにはそれなりの理由がある。”シルクロード”や”鯖街道”などは納得できる。
しかし街路樹のイルミネーションやライトアップをロマンチックと感じるかどうかは個人の感性の問題である。
天下の公道を勝手にスットコドッコイな名称で呼ぶのは納得できない。

そんな些細なことに目くじらを立てる訳ではないが、ある日違う道を走って北へ向かった。
ドーナツショップのメニューもあらたか食べ尽くし、我々には変化が必要だった。
そして我々は新天地を発見した。
それはとあるガソリンスタンドに隣接したコーヒーショップであった。
というよりガソリンスタンドが経営している...のかな?もちろん終夜営業である。
コーヒーとケーキ、パン類、ちょっとしたコンビニのようなコーナーもある。
しかもウィンドー越しに見えるガソリンスタンドはセルフ方式で、お客が自分で給油するのである。
なんとなく米国の長距離バスのひなびたサービスエリアの風情だ。行ったことないけど。
ダスティン・ホフマンとジョン・ボイト気分の我々。
唐突に金森幸介が「hiro、いっぺんガソリン入れてみてみ」とけしかける。
言っておくけど私は機械オンチである。自動販売機にだってからきし弱い。
昔の紙コップを自分でセットするタイプのジュース自販機で、紙コップを置かずにボタンを押して、
ジャジャ漏れするジュースを慌てて手ですくって飲んだ少年の末路である。
そんな奴が危険物であるガソリンを自分で給油する!?神をも恐れぬ凶行と言える。
しかし金森幸介は「前にタンブリンマンも入れてたけど、簡単そうやったで」なんてことを言う。
だってタンブリマンはエンジニアである。私はどちらかと言うと文系で...
スッタモンダしてる間に二十歳そこそこの女性が車を乗り付け、苦も無く給油し、去っていった。
「ほらな」と金森幸介。もう逃げ道はなかった。おんな子供に出来ることに背を向けるほど腰抜けではないぞ。

OK、コーヒーを飲む前に給油を済ませておこうじゃないか。フロリダまではまだ遠い。そんな心境。
カーステレオからはZZTOPが流れていた。なんだ勇気が湧いてきた。って大袈裟ですか?
車を給油位置に駐めると、傍らの液晶画面から機械的な女性の声が聞こえる。
「画面の指示に従って給油してください」
液晶画面をタッチして設定し、お札を挿入すると「給油口にノズルを入れ、給油してください」と指示された。
言われるままにしたが、ガソリンが出ている様子がない。不安である。
代金だけ取られては目も当てられない。しかも無人スタンド。文句を言っていく先もない。
昔、エロ本の自販機でのそんな不幸な体験が頭をよぎった。あれは悲惨だ。
出ているのかを確認する為、ノズルを抜いてみた。確かにガソリンは出ていた。
ジャ~ッ!足元に流れ落ちるガソリン。ジーンズもスニーカーもズブ濡れだ。パニ~ック!
「アレ~!」と私は叫んだ。これを医学的に”ガソリン・アレ~”と言う。(byケーシー、ロッド&マキ)
傍らにいる金森幸介に助けを求めた。
傍らにいる...と思っていた金森幸介がいない。キョロキョロする私。
なんと金森幸介は20mも離れたスタンドの入り口に立っていた。
これほど逃げ足の速いシンガーソングライターは過去にも未来にも類を見ないだろう。
しかも薄情にもホドがある。なんとかガソリンの噴出は止まった。
恐る恐る戻ってくる金森幸介。「だ、大丈夫か?」ってエエかげんにしなさい。
あんたが入れろって言うたんでしょが。「だって石油って危険やんか」って、このビビンチョ!
「石油が怖くてシンガーソングライターが勤まるか!ジョン・デンバーかて、あんだけ環境問題言いながら
庭に石油備蓄しとったんやど!」となんの脈絡もないことを口走る私。
なんとか無事給油し、我々はコーヒーショップに入った。
「...いらっしゃいませ...」と迎えた店員たちの態度がおかしい。笑いをこらえているように感じる。
レジカウンターを見るとなんと、ガソリンスタンドの監視モニターが据え付けられているではないか!
そう、我々のドタバタは一部始終彼らに目撃されていたのだ。ガッデ~ム!
ダスティン・ホフマン&ジョン・ボイトが一気にスティーブ・マーチン&ジョン・キャンディー...大災難である。
帰り道も違う道を選んだ。ドーナツショップが、ロマンチック街道が懐かしい。
阪神高速の高架下の道沿いは”すき家””松屋””吉野家”が軒を並べている。
我々は敬意を込め、即座にその道を”牛丼街道”と命名した。負けるな!牛丼屋さん!

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