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エピソード68 I Love My Shirt

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「僕の大事なコレクション」はイライジャ・ウッドが主演した映画であります。
金森幸介からお勧めを受けていたのでDVDを借りて観たら、これが面白かった。
ホロコーストがテーマに関わっているけれど、重くなく飄々としたテンポでストーリーは進む。
「ロード・オブ・ザ・リング」のイライジャは屈強で颯爽とした仲間たちと旅をしたが
今回はかなりトホホな連中との道行きであります。
僕も小さな思い出の品々をジップロックに入れてコレクションしようかしら
なんて気にもなったりします。

単に「僕の~」つながりだけど、「ぼくの好きなシャツ」はドノヴァンの歌である。
冒頭の写真はシングル盤のジャケットである。僕の大事なコレクションである。
「ぼくの好きなシャツ ぼくの好きなシャツ ぼくのシャツは着心地よくてステキだよ~」
ノーテンキな歌である。
「ええ歳した大人がシャツ一枚にそない興奮してどないすんねん」と
当時思ったものである。
しかしつい先日、シャツ一枚で大興奮のええ大人を目の当たりにしてしまったのである。
しかも身近な御仁が、しかもお二方で...

有山じゅんじ氏のライブに金森幸介がゲスト出演した後の打ち上げ。
遅れて到着した私に有山金森ご両人はビニール袋からシャツをそれぞれに取り出し
「hiro、これなんぼやと思う?」と口々に訊いた。
「さあ、5000円ぐらいかな?」とこたえる私に、御大二人はニタ~と顔を見合わせ
「わが意を得たり」という風にウン、ウンと頷いたのである。
「これなhiro、よお聞きや。380円や。380円!どや、ええやろ。羨ましいやろ?」
聞けば、ライブハウスの向かいに店を構える古着屋さんで購入したとのことである。
しかも二人してその380円シャツを着てステージをつとめたと言うではないか。
二人合計760円のステージ衣装...驚き桃の木山椒の木!
大枚はたいてライブに夢を求めて来てるお客はイカレコレである。
380円。牛丼だって並は食えても大盛は食えない。
思わず「ふた~りは安いシャツ見せた~ ふた~りで~安いシャツ着てた~」
と口ずさんでしまう私。

打ち上げも跳ね、金森宅へ向かう車中で金森幸介と私は柄にもなくファッション談義を繰り広げた。
我々は決してお洒落さんではない。でもそれなりに美学は持ち合わせている。
同じ古着屋さんで金森幸介が購入したもう一枚のシャツをみせてもらったが
イタリアンっぽいが、品の良いINTERMEZZOのピンストライプ・シャツだった。
彼のボルサリーノ・ハットによく似合いそうである。
「これも380円あるよ」「哀号~!私もその店行きたかったあるよ~」

金森幸介も私もTシャツには少なからぬ美学を抱いている。
材質は100%コットンに限る。
襟元がシャンとし過ぎていても、ヨレっとし過ぎていてもNGである。
サイズは少し小さめがベストだが、チビTはおヘソが見えちゃうからヤなの。言うよね~。
反対に光玄氏は大きめがお好みのようで、いつも明らかにツーサイズビッグである。
スパイク・リーなんかのセンスである。「N.Y.系ストリートファッションかな?」と訊くと
金森幸介はあっさりと「長田系や」とこたえてくれた。

私はボーダー柄のトレーナー類が好きである。ヨコシマな奴である。
贔屓のSAINT JAMES製だけでも5枚は所有している。そしてこの季節にはしばしば着用する。
金森幸介もボーダーがお好きなようである。しかしあまり着用した姿を見た記憶がない。
本人いわく「なんかボーダーってそれだけ着てたら派手やろ?」とのことである。
確かに彼の痩身のシルエットにあの帽子、加えてボーダー・シャツとなると
これはもう”エルム街の悪夢”の殺人鬼フレディー・クルーガー君である。
しかしあくまでシックを標榜する金森幸介の足元に眼をやると、ジーンズとスニーカーの間から
ど派手なボーダー柄の靴下が思いっきり自己主張しているのである。
あんさん、ドノヴァンに対抗して"I Love My Sox"って歌いなはれ!

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