top of page

エピソード113 亡き人を偲ぶ

お気に入りだった作家や音楽家や俳優の方などが亡くなってしまったりする。
私自身もまあ、最早そこそこなお年頃だし、その私が敬愛できる人たちとなると、
どうしてもご高齢とお呼びしても失礼ではない方々になってしまう。
だからして、次々とお別れとなってしまうのも致しかたのないことなのだろう。
そんなお別れが訪れたとき、私には必ず行う習いがあるのである。
亡くなられた方に著書などがある場合には図書館で借りて読み、
その方が音楽家だった場合には遺されたCDを聴くのである。

最近では池部良氏のエッセイを読んだ。
氏の著作には始めて接した私であった。著書を残されていることすら存じなかった。
いや感心しました。まるで丼で白い湯気をあげている炊き立ての白米と
浅漬けキュウリの漬物のようにホッコリ・シャッキリした文体に氏の人柄が偲ばれた。
そして「ああ、こんなことを思いながら人生を歩んだこの人はもうこの世にいないんだなあ」
と思わず遠い目をしてしまうのだった。
若い頃の東宝でのさわやかな二枚目役より、後の東映「昭和残侠伝」で演じた
ハードボイルド風間重吉役の良さんが好きだった私は、氏の名ゼリフ「ご一緒願います」
を思い出し、健さんのように颯爽とご一緒させて頂こうかとも思ったが、
あの世へご一緒するのはまだちょっと心残りなので今回はご遠慮させてもらった。
読後、金森幸介に感想を述べると「そうやねん。良さん、ええ文章書きはるやろ。
俺も好っきゃねん」と賛同を得、ここでもまた追悼の灯を一つ燈せたようでうれしい。

夕べ深夜遅くの夕食をとりながら夕刊に目を通していると
「ヤンタン生みの親 死去」の見出しがあり、訃報とも告知ともとれる記事があった。
そう、以前EPISODE83「邂逅 名伯楽」でご紹介させてもらった渡邊一雄氏が
お亡くなりになったのだ。
闘病生活をおくられているとは聞いていたが、残念というしかない。
図書館で氏の著書「ヤンタンの時代。」を借りて再読した。
「ライフワーク」と自他共に認める績を持つ人はやはり素晴らしいと思う。
ご本人が認めていたのかどうかは今ではもう誰にも分からないけれど。

しかし気になるのは新聞の記事の内容である。
葬儀は近親者で済ませたとのことであるが、続けて「大ナベさんを偲ぶ会byヤンタン」
と称する企画があると紙面は言うのである。
実行委員長は桂三枝氏で、発起人は谷村新司氏であるらしい。
会費は7000円とある。
公器である新聞に問い合わせ先まで記されているので一般のいわゆる「ファン」に向けての
告知なのだろう。
故人を偲ぶ。逝った者残された者の両方の為に「追悼」は必要だとも思う。
でも私の心をザワつかせるこの不安感はなんなのだろう。

「大ナベさんを偲ぶ会byヤンタン」に参加する人々は皆一律に7000円の会費を納めるのでしょうね。
もちろんタレントさんもミュージシャンもオヨヨさんもチンペイさんも・・・
ノーギャラは言うまでもないけれど。
会場費などの必要経費捻出のためだけに会費7000円が妥当なのかどうか私には分からない。
いわゆる一般のファンの皆さんは敬愛するおおなべさんを偲ぶために
交通費も滞在費も自費で賄ってやってくるのである。
故人を偲ぶのに名も無い人も有名人もなにもないはずである。
全員アゴアシ自費、手弁当での参加という誠実な偲ぶ会であることを私は切に望む次第であります。
「有名人の俺が忙しいのに来たったことが香典じゃ~っ!」とおっしゃる方には返す言葉もありません。
銭金の問題じゃなくて、心根の問題である。

とまあ、エラそな口をきいてしまったので話を変えましょう。(実は変わりませんが)
「追悼」や「偲ぶ」や「お別れ」 そういう会にはとてもデリケートな問題が伴うと思います。
「チャリティー系」にもそれに近い不透明さを感じるときがあります。
もちろん悪意を持って参加する方がいるとはまったく思いません。
でも「悪意のない不誠実」という怪物がどこかで生まれ操作され、
それがこの世界で一番厄介で、なおかつタチが悪いような気もするのです。
この世界の不幸の多くは「容認され続けるバカげたシステム」によって導かれたものです。
金森幸介がかつて情にほだされて参加したある音楽家の追悼ライブの会場では
参加したミュージシャンのCDが何食わぬ顔で販売されていたというから
なにをか言わんやの谷岡やすじであります。
まあ我らが金森幸介にその十分の一、いや百分の一でも厚顔無恥さ、
商売熱心さが備わっていれば、もう少しは売れたのだろうけれど、
バカげたシステムに顔を背け、不誠実を毛嫌いしつつ生きてきた金森センセイは万年ビンボーであります。
いやもう筆舌に尽くし難い窮乏であります。
かく言う私も負けてはおりません。来年には二人でノーベルビンボー賞受賞も夢ではありません。
文学賞受賞の村上春樹とボブ・ディランとのフォーショットも期待できるくらいです。
自分が選んだ人生、自業自得とはいえ、あまりやおまへんかのアマリア・ロドリゲスでげす。
だから皆さん、金森幸介としては亡くなってからいくら偲ばれても遅いのであります。
今、偲んで欲しいのであります。できれば即刻偲んで欲しいのであります。
エコカー補助金終わったけど、とにかく今すぐhoy-hoyのサイトでCDを買ってください。
ものすごく数少ないけど、ライブにも足を運んでください。お願いします。

zankyo.jpg
bottom of page