エピソード125 TEN YEARS AFTER

古いDVDを整理していたら、タイトルのないものが数枚あったので再生してみた。
いきなり大音響でのライブ映像が飛び出てきた。しかもなんともザラついた映像である。
ピースマークが貼られたチェリー・レッドのGIBSON ES-335をかき鳴らし、
かなりのアップテンポでブギー気味のブルースを熱唱する長髪の白人男性。
TEN YEARS AFTERのアルヴィン・リーの勇姿である。
曲は"I'm Going Home"
オーディエンスのただならぬ様子からすると、多分ウッドストック・コンサートのステージだろう。
当時、さかんに「早弾きの神様」と崇め奉られていたアルヴィンであったが、
今聴いてみれば、まあ確かに早弾きだけれど「それって、なんか意味あるんですか?」
といった感が否めない。
因みに僕は当時高校生で、度重ねた昼休みでの校外脱走のお陰で
「早退きの神様」と崇め奉られていたが、まあ、それにもあまり意味はない。

しかしTEN YEARS AFTERの白熱の演奏、会場の熱気、アルヴィンのマシンガン・ピッキング・・
当時の独特の空気感といったものがそこはかとなく感じられて、なぜかとても切ない。
ウッドストックの映像だとすると、TEN YEARどころか40年以上も前の出来事である。
僕はこの映画が日本で封切られた年に初恋の女性と巡りあっている。・・・か

さて今、私の職場の壁に2枚のポスターが収まったフレームが飾られている。
一枚は金森幸介たちが大阪服部緑地野外音楽堂で開催していたフリーコンサート
"OH!MY ENDLESS SUMMER 7"
もう一枚は名古屋フリコン"LOST PARADISE"開催を告知したポスターである。
どちらもデザインは森英二郎さんである。
"OH!MY ENDLESS SUMMER 7"の方の開催年は定かではないが、
"LOST PARADISE"の方は2001年10月13日(土)とはっきりと記されている。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



直近の名古屋フリコン開催からもうすぐちょうど10年が経つのだ。
TEN YEARS AFTER

私はその年のことを今でもはっきりと覚えている。
今回は私個人の感傷的追想話になることをお許しください。

前年に発表されたアルバム"LOST SONGS"のレコーディング・メンバー全員を迎えての
金森幸介を中心としたフリーコンサートが企画された。
21世紀が幕を開けたばかりだった。"LOST PARADISE"である。

開演前に森林公園野外ステージの楽屋で私は金森幸介から
”とうが立ったテディベア"みたいな男性を紹介された。
仲野papa仁太さんとの初対面の場であった。
「もしかして、lefty-hiroさん?」と手を差しのべてくださった氏の
大きくて暖かな掌は、そのペダル・スティールギターの音色と同じ肌触りだった。
お互いに同じCDで同じ曲の制作に関わっていたにも関わらず、我々は初対面だったのだ。

初代幸介WEBをプロデュースしてくれていた木村君とも、野外ステージの観客席である
芝生の上で始めて紹介された。やけに大きな男だった。
フリコンのメンバーの方々ともほぼ始めて言葉を交わした。
口ベタで内弁慶の私は人付き合いがとことんヘタクソである。
だから、誰と対しても面と向かって多くは語れない。
でもその年の5月から掲載させていただいた"inside-report ドーナツショプにて"
のお陰で「益はないが害もない金森幸介の腰巾着」くらいには認知して貰える
ようになっていたが、
"LOST PARADISE"開催の5日前に私はその第一期inside-reportを終えていた。

たまらなく居心地の良い秋の日だった。
失われた楽園はまさしく目の前にあるような気がした。
もしそこには存在しなくとも、この音楽仲間たちとなら、きっといつか
探しあてることが出来る気がした。

あの日から10年の月日が流れようとしている。
木村君のあの大きな背中はもうこの世界にない。
金森幸介は10年歳をとったが、今も歌い続けている。

last"OH!MY ENDLESS SUMMER"を終えた打ち上げで金森幸介が「これでお終い」と言った
記憶が私にはない。思い違いかも知れないけれど。
名古屋のメンバーたちからもその言葉を聞いた覚えはない。
もちろんカタチとしてのフリコンがTEN YEARS を経て甦ることの困難さは
私にも分かっている。
アルヴィンたちが「10年後にもこのバンドを続けていようぜ」と願って名付けたバンドも
願い空しく解散したわけだしね。

でも毎年梅雨が明け、海開きの声が聞こえ、入道雲が湧く頃、
陽炎の道に揺れる逃げ水のように、僕はゆらゆらと口ずさむのだ。

八月の国に住む君の友達に 伝えてくれないか いつもの場所でと

繰り返される日々の業に疲れ果てるときもある。
そんなとき、僕はこの2枚のポスターに目をやる。
そしてその二次元に封じ込められた遥かなる友人たちのスピリットを想う。
また更に10年後、同じ想いを擁き続けている自分でありますように。
終わり無き夏を胸に僕達は失われた楽園を今も探している。