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​エピソード131 われはおじさん I,uncle

私はおじさんである。

「そんなこと重々わかっとるわ!」という声が多方面から今聞こえました。
性別と年齢からカテゴライズされた「小父さん」ではなく「叔父さん」であります。
私には甥っ子が二人と姪っ子が六人いるのです。
私は末っ子ですので、彼ら彼女らにとって「伯父さん」ではなく「叔父さん」であります。

みなさん当然、ここで桜たまこの「おじさんルンバ」や伊東きよ子の「花とおじさん」を
連想されたことと思いますが、そういうフケ専ギャルについて言及するのは
今回は差し控えさせていただきましょう。

自分の成長期にヒップな叔父さんがそばにいて、
人生のなんやかんやを教わった人間は幸運であると私は思う。
親でもない、兄貴でもない、友人でもない、教師でもない、
親の弟という絶妙な距離感を持ったセンスの良い男性・・・
残念ながら私にはそういう血縁男性は存在しなかったが、ずっと憧れてはいた。
私にそんな叔父さんがいたなら、きっともっともっと実り多い青春時代だったに違いない。
もしかすると、私にとって金森幸介こそが人生を導いてくれる叔父さんなのかも知れない。

ポール・マッカートニーに「アンクル・アルバート・/ハルセイ提督」という曲があるが
そういうイメージである。ナンバーワン・バンドの「六本木のベンちゃん」も
けっこうニュアンスを伝えている。初音ミクでもよし。か?

私の長男と同い年の甥っ子がいて、彼が小学生から中学生くらいまで
隣同士の家で生活していたことがあった。
甥っ子は足しげく私の部屋にやってきては、楽器を珍しそうに眺めたり、CDを聴いたりしていた。
彼の両親はクラシックとか上流っぽい音楽が教育上好ましいと考えたのか、
長女にはピアノ、次女にはバイオリン、末の甥っ子にはチェロを習わせた。
日曜日には上流な知人を招いて居間で室内弦楽演奏会&ティ-パーティー・・・
・・・クラシックが悪いとは言わん。じぇんじぇん言わん。
しかし、私は彼のヒップでクールな叔父さんになってやらねばならなかった。
いや、誰に頼まれたわけでもないが、そんな使命感が沸々と湧き上がってしまった。
甥っ子の中学校卒業祝いにベースギターを一本プレゼントしたのである。

私はまさに彼に禁断の果実を与えてしまったのである。
高校生になった彼はforbidden fruitをガブリと齧り、パンドラの函をパックリと開けてしまった。
バンド三昧の高校生活。「大学行かない。バンドやる宣言」
上流志向の彼の両親からは「なんちゅ~ことをしてくれんねん!」という非難の視線・・・

執拗な親からの説得で渋々進学した甥っ子は今、同志社大学内で結成したバンドで活動している。
現在も事あるごとに色々と私に音楽や楽器のことを相談してくる可愛い甥っ子だ。
インディーズ・レーベルから何枚か音源を出している。
NOKIES!というバンドネームでこの春にはアメリカツアーも行ったようだ。
WEBもあるようだし、動画サイトにも投稿されてると思うので、
よかったら応援してやってください。
甥っ子は大学を卒業したらイギリスの大学に修士課程を学びに行きたいらしいが、
なんと「ビートルズ学」みたいな学部があるらしい。さすが大英帝国である。
彼の上流両親も今では熱心にバンドに打ち込む彼を暖かく見守ってくれている。

甥っ子がデレク・トラックスだとしたら、私はブッチ・トラックスということになります。
金森幸介はさしずめデュアン・オールマンで、有山じゅんじあたりがエリック・クラプトンか?
甥っ子が小沢健二なら、私は当然小澤征爾ということになりましょう。
金森幸介はバーンスタインで、有山くんはカラヤンってとこですか。
私が徳光和夫だとしたら、甥っ子は当然ミッツ・マングローブってことになりますね。
彼も英国の大学で学んでるしね。
まあなにはともあれ、息子たちも甥っ子もみんな、
この先もずっとロックンロールを忘れずにいてくれたら
ヒップでクールでイルなおじさんとしては素直にうれしい。

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