top of page

エピソード14 銭湯記

kerorin.gif

ここ数年の間に我々は幾度銭湯を訪れただろう。
関西周辺にも流行りの”スーパー銭湯”なるものが出現し始めたのも理由の一つだが
その遥か以前から我々は「横丁の○○湯」のような銭湯が大好きだった。
そう、屋根の上でマチャアキと浅田美代子が弾き語りしてるような場末のお風呂屋さんだ。
番台に座っているのがシワクチャのおばあちゃんというシチュエーションがベストだ。
「あっ!ゴメン!おばあちゃん、一万円札しかないわ~」とナケナシの一枚を出す。
彼女が老眼鏡を取り出し釣銭を数えているその数分間、番台越しに至福の光景を満喫...
なんて左とん平のような古典的助平根性はこの際抜きにしたい。ヘイ!ユーブルース!

金森幸介も私も銭湯は素晴らしい商売だと思っている。
お客さんはみんな幸せそうにホッコリしている。そんな幸福感を与えることが出来てお金も稼げるのだ。
郊外の駐車場完備のスーパー銭湯などは、一時期隆盛を極めたヘルスセンターのように
高額な料金設定ではなく、家族連れでちょっとしたスパリゾート気分だって味わえるのだ。
スーパー銭湯出現はバブル崩壊の賜物と言えるかも知れない。
バブル経済の恩恵をひとつも受けなかった人たちにも容赦なくバブル後の不景気の風当たりはキツイ。
そんな疲れた心身を、さあみなさん、電気風呂、打たせ湯、ジェットバス、サウナ、露天風呂、
檜風呂、薬草湯で思いっきり癒えまくろうではありませんか!
我々はとにかく新規開店の銭湯があると聞くや即、タオルを腰に巻いて駆けつける。(ウソ)
そしてトップリと露天風呂に浸かりながら評価をするのだ。
従業員☆☆ 脱衣場☆☆☆ 洗い場☆ など。言ってみれば”銭湯ミシュラン”である。
お風呂屋界のご意見番、お湯グルメ山本益博である。
雨中の露天風呂も趣きがある。大接近した火星だけが浮ぶ夜空からサメザメと降り注ぐレインシャワー
日頃心に沈殿したヘドロを洗い流してくれるようだ。爽快!そうかい?

我々がいちばん多く利用するのが豊中インター近くのG湯である。
なんといってもここは年中無休24時間営業が謳い文句。いつ掃除しとんねん!お湯の入れ替えは?
そんな細かい事をいちいち気にしていては慈恵医大病院で手術は受けられない。
お湯は開店以来注ぎ足し注ぎ足ししてきたいわば老舗おでん屋のダシ汁の味わいなのだ。
栗の花の如きカルキ臭が強いのがここのお湯の特徴である。
「刺青を入れた方、暴力団関係者の入場を固くお断りします」と断わりがあるわりには
深夜1時過ぎの客の70%がそっち系なのもご愛嬌だ。
そして20%がホモ。残りの10%が我々ノンカテゴリーである。
いつだったか脱衣場で二十歳そこそこの色白青年に、
「あの~..フリースの~ジッパーが下ろせなくなったんで~..下ろして貰えます~?」と乞われ、
思わず言われるに従ったことがあった。なにが悲しゅうて男のジッパー下ろさなあかんねん!
俺が下ろしたいんは若いギャルのワンピースの背中のジッパーに決まっとるがな。
抱きしめながら後ろ手にそっとね...ってなに細かい設定しとんの。
この話は金森幸介が脚色に脚色を重ねて吹聴しているのでご存知の方もおいでだろう。
因みに金森脚色では私が「鼻息荒く、歯で噛んでジッパーを下ろした」ことになっている。

スーパー銭湯には大抵の場合、男女別脱衣場の他に喫茶軽食コーナーがある。
そこで瓶入りのフルーツ牛乳をゴキュゴキュ飲みながら湯上りの女性を眺めるのもまた一興。
湯上りは七難隠すとはよく言ったものである。誰が言うたんやって?私です。
七難隠してもまだ十難くらい残ってる女性もおられるが、
しっとり濡れた黒髪にホンノリ桜色のお肌は艶っぽくて、タマリマシェーンカムバ~ック!なのだ。

最近のオヤジ雑誌では”若い女性と行くお忍び温泉宿”なんて特集が目を惹く。
紳士淑女のみなさん、こういう風潮をどうお考えだろうか?
私ははっきり言って羨ましい。無茶苦茶憧れる。
私にそこそこの財力があり、モテモテのロマンス・グレーだったりした日にゃ、
好き好んで五十男二人で銭湯通いなど絶対しない。
そう思って”LEON”というパンツェッタ・ジローラモが表紙のオヤジ雑誌を見てみると、
”モテルちょい「不良(ワル)」オヤジの作り方”
なんて、若い女性に媚を売るような特集のオンパレードなのだ。
”今宵はふたりでヌリヌリ→パフパフ→ト~ロトロ”
なんのこっちゃそれ? クラクラしそうな思いっきりエロ擬音で脱力だ。
トドメは若い女性に対する総称である。ムプププ...笑うよ。
”パーティーにニキータをエスコートする..”だって。
俺レオン 君ニキータ、ジュテ~ム..リュック・ベッソンもさすがにビックリである。
ポパイ&オリーブに倣ったんだろうけど、ハゲたおっちゃんがなんぼなんでもである。

オヤジ雑誌のあまりのトホホさに、男二人の銭湯通いもまんざら捨てたもんじゃないか..
と思い直した初秋であった。

bottom of page