エピソード2 休日はCDショップ

みなさん、休日はどのように過ごしておいでですか?
読書、映画鑑賞、スポーツ、これからの季節、ご家族でドライブなどもいいですね。
金森幸介の場合はどうでしょう。まあほとんどが休日ですけど。

どうでしょうか、世間一般の50過ぎの男性の休日の過ごし方
陽だまりの植木市や骨董市をゆっくりと見て歩き、手に入れた盆栽や壺などを持ち帰り
シブ茶でもすすって愛でる。なんてのが平和でしょうか。
金森幸介の場合もある意味お仲間であります。ただ対象物が少し違っているだけで..
音源、CDを物色して回るのが彼の休日の楽しみのひとつであります。

これをご覧のみなさんも音楽をお好きな方がほとんどでしょうが、
CDショップへ行かれた時、どんなコーナーをチェックされるでしょうか?
”ROCK””COUNTRY””R&B”...せいぜいそんなところでしょうか。かく言う私もそうです。
しか~し!毎日が日曜日の金森幸介は違うのです。ひとたび音源探しの旅に出るや、
日の出から日没まで街のCD屋というCD屋を覗き、全てのジャンルの棚を網羅するのであります。
その姿はもはやCDの魔力に憑かれた亡霊のようであります。

その日も金森幸介はまだ見ぬ(聞かぬ?)音源、意中の音源を求め、街の喧騒の中にいた。
とあるCDメガ・ショップに入り、2階の洋楽コーナーへ。
自分が邦楽ミュージシャンでありながら基本的に邦楽コーナーはスルーするようだ。
”ROCK””COUNTRY””R&B””JAZZ”...すべての棚に鼻を利かせる。
店内を壁づたいに1m30分ほどの速度で進む。カタツムリといい勝負か..亀よりは確実に遅い。
片手で1枚1枚めくってチェック、片手には購入候補が数枚確保されている。
しかしギターのフレットさえも見えづらいという視力低下の昨今。
レコードからCDに替わってジャケットの文字を確認するのがキツイ。
でもそんな弱音は吐いてはいられない。愛しのCDちゃんを窮屈な棚から救い出すまでは!

その姿は相当異様に見えるだろう。しかし、ちゃんと時々店内を見渡し、見知った顔がいないか
チェックをいれるのだ。一応羞恥心はあるのだ。
バーゲン盤コーナーももちろんチェックの対象だ。っていうかここが一番のハイライトと言ってもいい。
人気の薄いデッド・ストック..アナログ盤時代にはカット・アウトと呼ばれた..書店でいえば再販本..
一般的には受けが良くない音源、でも自分にはお宝..そんなCDとの出会いの為に
金森幸介の人生はあるのだ。しかも安価であれば願ったりかなったり、藤原のカマッタリである。

メガ・ショップに入って2時間も経っただろうか、金森幸介の亀速度の前進が止まった。
そしてワナワナと震え出した。片手に握った1枚のCDを目の高さに揚げ震えている。
そこは”FRENCH・POPS”のコーナーであった。
彼が手にしたのは”フランス・ギャル”のベスト盤、しかも豪華ブックレット付きである。
その昔「夢見るシャンソン人形」で日本でも一世を風靡した仏国カワイコちゃんである。
しかし今思えばなんというそのまんまやんけ!な芸名だろう。
”フランス・ギャル”..言わば”日本の若い女性”みたいな名前やんか。
幸介は心で思った。「神様、ありがとう!」
これで店内をくまなく一周したことになる。他の候補CDをそれぞれの棚に返し、
レジに向かう金森幸介。”誰にも見つからんで良かった..ジュテ~ム!僕の愛しいギャルちゃん..”
レジでCDを差し出すやそこにいた店員が耳打ちした。
「金森幸介さんですね?僕、ファンです。」...そして店員は意味深な含み笑いを漏らした。
.....一部始終を目撃されていたのだ。亀前進も、老眼チェックも、ワナワナも...
金森幸介は心で怒鳴った。「最初から言えよぉ~!!」

彼の名誉の為に言っておきますが、このCDは本当に音質も素晴らしい名盤でした。