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エピソード20 darkend of the street part1

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穏やかに晴れた三月のある日の午後、我々は銭湯に出かけた。
「またそんな話かい!」とお嘆きの諸氏にはお気の毒だが、またそんな話であります。

行き先はお馴染み豊中インター近くのG湯である。年中無休24時間営業!とは以前にもお話した。
我々がいつも訪れるのは深夜である。2時3時である。ヘタすりゃ早朝である。
深夜のG湯ははっきり申し上げて怪しい。以前お伝えした通り、客層の30%がカバちゃんカリヤザキ系、
50%がボディーアート系、残りが我々ノンケである。以前と比率が変わっていたらお許しを。

しかし、昼間のG湯は深夜とはまったく趣きが違った。
まずVシネマに登場するようなガテン叔父貴系の姿が見かけられない。
ほとんどが近所のご隠居で、なんともノホホンとして健全ムードである。
天窓があることも初めて知った。陽光が差し込んだ湯船で我々は心底リラックスした。
本音を洩らすと深夜のG湯に真のリラックスはない。絶えず臨戦体制を整えていなければならない。
太陽の下の露天風呂も格別である。新宿二丁目系の角刈り君に股間を値踏みされる不安も今はない。
まるで北欧のスパリゾートのようである。行ったことないけど...
これで入浴料370円はお値打ちである。

気を良くした我々はG湯を出て、またまた音源探しの旅に出かけることにした。
以前の大阪ミナミ、日本橋篇をご記憶の方もいらっしゃるだろうが、
USED、セコハン、中古CDが我々のメイン・ターゲットである。
はっきり言って中古CD屋が多い地区はディープな地域が多い。
日本橋の”○かX”の向いの五階百貨店などはスサマジイ。専門工具を扱う店の親父などは
ツルッパゲなのだが、何を思ったか靴墨で髪の毛を描いていた。
さながら実写版鉄腕アトムorダウンタウン松っちゃんのアホアホマンである。
今もご健在なのだろうか。

なもんで、今回は少し趣向を変えて神戸に行くことにした。
お洒落な神戸ガールが颯爽とショッピングを楽しむ三宮である。
市営の地下駐車場に車を駐め、さんちかタウンへの階段を上った。
何故かこの階段はいつも駆け足になる私。
アーケードの商店街を右に折れてかねてから目星を付けていたビルに入った。
3階には大きな楽器屋さんも店を構えるこのビル、しかしその内部は...やはり怪しい。
三宮のディープな場所といえばJRの高架下を思い出される方も多いだろうし
漢方薬屋さんの店頭を飾る双頭の鹿の剥製などには今も私は卒倒しそうになる。
思想的に超偏向した書物限定の書店なんかもある。がしかし...
このビルだって負けてはいない。通路に所狭しと並ぶガチャガチャマシーン
中身はアイドル、アニメ、ガンダムグッズなどが主である。
しかし中古CD屋はしっかりと存在し、我々は何枚かを購入した。
ここでみなさんにお聞きしますが、みなさんはCDにもカットアウト盤があるのをご存知でしたか?
レコード盤の時代には再販価格で販売される輸入盤に
ジャケットの端っこを斜めにカットされた物が存在しました。
ここで金森幸介が購入したヴァン・ダイク・パークスの盤にビックリ!
ジャケットの端がプラスチックケースごとザックリと見事にカットされていたのです。
さすが権利にうるさい米国のすることは身も蓋も無い。

地下がまた圧巻であった。生鮮食料品市場なのである。
セレブミセスご用達の雑誌VERYの表紙を飾る三浦りさ子さんが住むKOBEの中心地である。
全国のお洒落さんの羨望の視線を一身に集める街である。
イルハン獲得&故障離脱でン億円を棒に振ったヴィッセルのホームである。言い過ぎやっちゅうの!
その禁断の階段をひとたび降りるや、そこには魚屋、八百屋、乾物屋が軒を並べているのだ。
漬物屋もある。しかもそのすべてが一様にひなびているのである。
もう一度言うが、KOBECITYの中心部の地下街である。平成の御代も十六年を数える21世紀である。
”懐かしの昭和の市場”などというテーマパークではない。正真正銘、全店営業中である。
ダミ声の親父が「え~安いで安いで~」なんて客引きをしている。
タクアンやアジの干物なんかの匂いが渾然一体となって辺りを漂っている。
しかもその向かいで平然とブランド物を商う店もある。
魚屋のオッサンがさばいたウロコが張り付いてそうなショーウィンドーで
 ”エルメス・バーキン120万円”って言われてもなあ。

私と金森幸介は凍りついた。これではまるで戦後の闇市である。
我々は声を合わせて長さんを偲んだ。「ダメだこりゃ」

私の身になにも起こらなければpart 2へ続く...        

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