エピソード26 ROCKバカ一代

みなさんは極真会館の総帥だった故大山倍達氏をご存知でしょうか?
梶原一騎原作の「空手バカ一代」という劇画をお読みになられた方もいらっしゃるでしょうが、
その主人公こそ、”牛殺しマス大山”こと大山倍達氏であります。
少年マガジン連載当初の作画はつのだじろう氏でした。メリージェーン☆ひろのお兄さんでもあります。
その後つのだ氏は恐怖漫画家として売れっ子になるのですが、「空手バカ一代」は
氏の代表作である「うしろの百太郎」や「恐怖新聞」の何倍もオカルト色が濃い劇画でありました。
なんせ”空手バカ”なのです。マス大山は空手修行の為、山ごもりをして猛特訓するのですが
途中人恋しさに挫折しそうになる自分を、片方の眉毛を剃って制するのです。
猛牛を一発で仕留められる豪傑が「人恋しい」?
拳銃装備のN.Y.マフィア三人を秒殺したツワモノが「片剃りマツゲを見られて恥ずかしい」?
意外とデリケートな格闘家であります。マス大山。
中国拳法、タイのムエタイ、ロシアの地下プロレスと舞台はまさにワールドワイドでありますが、
対戦相手が考案してくる必殺技が「敵の足裏に油を塗ってスッテンコロリさせちゃう」
といったチマチマとした作戦のオンパレードで苦笑してしまうのであります。

「空手バカ」とは「空手に関して常軌を逸している」という意味だと思う。
「釣りキチ三平」という漫画もあるが、あの「キチ」はフル表示したらお叱りを受ける「キチ」なのだろう。
「バカ」でも「キチ」でもどっちでいいような気もするけど、
常軌を逸するという意味では「バカ」のほうが雰囲気ではないかと私は思う次第であります。
その点「○○マニア」や「○○オタク」も違和感がある。言外に「愛すべき...」を感じることが重要。

最近、金森幸介が梅田の駅前ビルの催事店で500円を支払って入手したのが
humble pieのライブ盤である。ジャケットではスティーヴ・マリオットがお馴染みの黒いレスポールを下げ、
ジーンズの股も裂けよ!とばかりに足を広げて見得を切っている。カッチョ良いのである。
少し遅れて私が泉南の胡散臭いリサイクル・ショップで680円(税込み)で入手したこれまたライブ盤。
スティーヴはやはり同じレスポールにこちらは上半身ハダカである。
背後にピンぼけて写ってるベースのグレッグもハダカである。
soul to soul body & body 男のハダカ祭りですたい。
どうやら海賊盤のようだけど、これまたカッチョ良かですばい。
ロックバンドはやっぱドラム、ベース、ギター×2の4ピースが理想である。
フロントラインの少なくとも一人は上半身ハダカが鉄則である。
一曲目は"Hot n' Nasty" 全員の共作曲でのオープニングもやはり体育会系を感じさせる。
スティーヴ・マリオットは孤高のシャウターである。そんじょそこらの絶叫歌手とは次元が違う。
ロバート・プラントもイアン・ギランも一途さでは彼の足元にも及ばない。ショーバイっ気皆無。
間寛平と同様「わしゃ、シャウってないと死ぬんじゃ」な体質である。
ライブの曲間も、「え~、今日はどうもありがとう、それじゃ次の曲は...」なんて冷静なMCはない。
とにかく訳の分からないことを「~~~!~~~~!~~!~~~~~!」とシャウり続けているのだ。
それに触発されてか、最近の金森幸介発のメールも「~~~!~~!」だらけで鬱陶しいことこの上ない。
歌のキー?んなもん、自分が出せる最高音に決まってるじゃん。だってROCKだもん。
アンプのセッティング?フルテン以外になにがある?だってROCKやろが。
そんなひたむきさが金森幸介と私が惹かれる最大の理由である。
「そんな調子で続けたら早死にするぞ!」と思ってたら、その通りになっちゃった。
まさに命をかけてのROCK道一直線といえる。孤高のシャウター、稀代のROCKバカである。
「バカが来たりてROCKする」のである。「バカが戦車でROCKする」のである。
「ゆきゆきて、ROCKバカ」なのである。

そういえば以前、ロックシンガーとしてデビューすることになった次男のお披露目で西川きよしが
「息子の”ロック”をよろしくお願いします!」と深々と頭を下げている光景をテレビで見たことがあるが、
親によろしくお願いされちゃうロックもなんだかなあである。
キーボーJr.がその後演奏し始めたのが「♪飛ばすぜハイウェ~!」というような曲だったが、
横から親父が「制限速度は守らなアカンで!」と目をむきながらツッコミを入れそうでヒヤヒヤした。
ROCKバカは一代で充分である。二代も三代も続けちゃいけない。
でも「親バカ」というのはおかしな表現である。「子供に関して常軌を逸する」という意味では
「子バカ」というべきではないだろうか。それとも「親という立場に関して常軌を逸する」なのかな?

スティーブ・マリオットの音楽はセールス的には大成功したとは決していえない。
だってバーゲンとはいえ500円や680円なんだもん。
でもsmall faces時代からhumble pie、そしてソロに至るまで彼の一途さは変わることはなかった。
どれもほんとカッチョいいけれど、ピーター・フランプトン以外はまあ華のないお仲間が勢ぞろいである。
small facesはスティ-ヴ脱退後、華ありまくりの二人の加入によって超売れバンドになるのだけれど。
ロニーもイアンもケニーもグレッグもジェリーもクレムもひたむきさにかけては全員涙ものである。
マリオット・レーン作品はけっこうポップで今だったらウケそうな気もするけど
二人とももうこの世にはいないのはやっぱり残念。
さる友人などは”スティーヴ・マリオネット”と思っていたのが情けない。人形劇かい!
”ピーター・プランクトン”...大量発生で赤潮かい!
金森幸介も私もマリオットバカだが、中部地方にも同好の志が若干名おられるらしく心強い限りである。

 

スティーヴ・マリオットのR&Bに対するリスペクトは切なくさえも感じる。まさにROCKバカ一代記。
私は最近、金森幸介氏に「hiroも安売りCD探しの腕上げたなあ」とお褒めをいただいた。
ほんまちーさな勲章である。我々の音源探しの旅は日に日にディープさを増すばかりである。
これまたROCKバカである。適正価格のプライス・タグが下げられた中古CD屋さんでは飽き足らず、
古本屋の片隅のコーナーから、遂には片田舎のリサイクル・ショップにまで辿り着いてしまった。
ホコリを被った木彫りの熊や海亀の剥製の間に忘れ去られた名盤を発掘する醍醐味よ。
クリスマスムード盛り上がる都会を尻目に我々ROCKバカは今日も行く。