エピソード5 楽園の人々

今、僕の手元に1枚の写真がある。日付は2001.10.13
芝生の上での集合写真。2年前に愛知県尾張旭市の森林公園で開催された
フリーコンサート”LOST PARADISE”の翌日、撤収を終えた関係者のスナップである。
写っているのはLOST PARADISEの面々、金森幸介、森氏ご夫妻、そして僕だ。
緑の芝生、そして遠景に半円の白いステージ、まるで花園ラグビー場のゴールをバックにした
高校ラグビー球児のように一様に眩しい表情である。(アタマが眩しい人もいる)

名称は変わったけれど、森林公園でのフリーコンサートの歴史は古い。
その道のりは常に金森幸介と共にあったと言って差し支えないと思う。
僕がもしトーキョートッキョキョカキョクの役人だったら、間違いなく彼らの
「フリコンの楽しみ方のノウハウ」と「フリーコンサート」を特許登録して与えるだろう。
他の誰も使用しないだろうけど。

僕は「音楽大好き!」「平和大好き!」「戦争反対!」などのプラカードを掲げて近づいてくる
人種が苦手だ。きっと金森幸介も同じだと思う。
彼らにはそんな匂いが微塵も感じられない。各々が抱える人生の重みなど垣間も見せることはない。
それどころか大人なのか子どもなのかさえ微妙だ。「指輪物語」のホビットのような存在なのだ。
僕は彼らと音響のZ氏に「演奏者だけが音楽を奏でているのではない」ことを教わった。
野外音楽堂での彼らは自らの役割を淡々とこなし、それでいて自由に音楽を楽しんでいる。
「毎年開催しなければ..」という使命感などもない。
僕などは単純に「この人ら、カッコええな~!」と感動してしまうのだ。
冗談抜きで彼らとZ氏は僕のアイドルなのだから、サインを貰いに回りたいくらいなのだが、
ビョーキ並みの超人見知りの僕。どんな雑踏の中でも全員の顔を判別出来る自信があるけれど、
声をかける事も出来ないのだ。
同じように森林公園の芝生の上の聞き手もこれがまたみんなカッコいいのだ。
世間の風はやっぱキビシイし、お金はきっと必要なんだけど、
彼らのことを思うと「まっいいか」という気になるから不思議だ。

今年も夏の終わりの森林公園で彼らに会うことはないのだろう。
もしかしたらこの先何年も何十年もそれは叶わないのかも知れない。
でももしそうだったとしてもそれほど不幸だとは僕には思えない。
ヒョッコリと「今年はやっちゃうよ」という知らせを聞いて「ムフフ」とほくそえむ。
それが正しい流儀なのだ。だってフリーコンサートなんだもん。

う~む..今一度写真を見直すと、パッと見は全員サエないおっちゃんですわ。