エピソード60 大阪名物 爆キャラ発掘 前編
梅雨の合間をぬって、奈良国立博物館で開催されている「国宝法隆寺金堂展」に出かけました。
先に出品されていた多聞天像、広目天像に続いて増長天像と持国天像が加わり、
わが国最古の四天王立像、金堂の外界に遂に初終結。完璧なフォーピース・バンドであります。
まさに圧巻!飛鳥のビートルズ 平成に降臨であります。
今まで土門拳の写真などでしか知らなかった四天王。生ご本人たちにじっくりと対峙すると
各々のキャラクターがまったく異なっていることに驚かされる。
四天王達に足蹴にされている邪鬼たちのキャラもそれぞれで楽しい。
まるでみうらじゅんの魂が乗り移ったかのように、私はその他の仏像などの展示物を
夢見心地で鑑賞して回った。う~ん、エクセレント!
閉館時間まで鑑賞し、館内の日本庭園を望む甘味処でみつ豆と冷抹茶などをいただき
期間限定で夜間ライトアップされている奈良町をホテホテと歩き、
「鹿男あをによし」にも登場した池に浮かぶ浮見堂などを散策。充実の半日を送ったのであった。
しかし私が奈良に滞在中、一度として例の平城遷都1300年祭キャラクター「せんとくん」を
見かけなかったのである。
せんとくん、ここぞという場所にはいらっしゃるのだろうが、
少なくとも私の目には留まらなかったのである。因みに「まんとくん」も不在であった。
奈良の人々は「せんとくん」を許していない。「まんとくん」も許していない。
いや、キャラ設定自体に懐疑的なのだ。きっと。
確かに東大寺の大仏様も南大門の金剛力士像も当時の為政者による
逆扇動的イメージ・キャラ設定だったのかも知れないが、レベルが違うっちゅうねん。
「仏像」に続いて「ゆるキャラ」 奇しくも完璧にみうらじゅんの世界ですね。
奈良から帰阪して自宅でテレビのスイッチを入れると、なんとまあ
道頓堀の食堂ビル「大阪名物くいだおれ」の閉店をめぐって上を下への大騒ぎであった。
私や金森幸介の私感ではあるが、「なにもそないに...」という思いである。
なんぼなんでもTVニュースで「サミット初日」をさておいてトップで紹介されるほどの
事件ではないだろう。まあ関西だけだろうけど。
「くいだおれ」に金森幸介は一度二度、食事に出かけた記憶があるそうだが、
私は生まれてこのかた一度も店内に入った経験がない。大阪暮らし五十数年の私がである。
「くいだおれ」向かいにあった食堂ビル「ドウトン」や千日前の「千日堂」が時代の波に飲まれ、
次々とその灯を消した時、人々は少しでもセンチメンタルを感じただろうか。
「くいだおれ」に対するリスペクトの十分の一も少なくともメディアからは伝わってこなかった。
なんの報道もされず誰にも看取られず、孤独死さながらの最期ではなかったろうか。
音楽ファンである私は
「ドウトンへ行こうよ 触れ合うなにかがあるから 探していた味覚があるから
ほら あのお店がドウトン!」や
「千日前の千日堂~ 甘党フアンの千日堂~ 食堂百貨の千日堂へ行こうじゃな~い~か~」
なんていうテーマソングによって言い知れぬ愛着を覚えている。
去年死去された大久保怜氏歌唱による居酒屋「たよし」「とんぼり」の姉妹曲も切ない。
「た~ん た~ん た~よ~し~ 行きよし た~よ~し~」
「と~ん と~ん とんぼ~り~ ど~とんぼ~り~の~」
...とほぼ同じメロディーのやっつけ仕事のように思えるが、
「タイタニック号」と「オリンピック号」のような秘めたるミステリーの存在も想像させられる。
「喜楽別館」のテーマソングも忘れられない。
「喜楽別館 気楽なと~こ~ろ~ 喜楽別館 おこしやす~! 気~楽に チャチャチャン」
二番の歌詞がまたシブい。
「喜楽別館 気楽なと~こ~ろ~ 喜楽別館 気がねなし~! 気~楽に チャチャチャン」
飲食店がなんぼほど気楽を売り物にしとんねん。客が気がねしてどないすんねん。
しかし別館は有名だが、本館は実際に存在したのだろうか。
十三の料亭「三笠」のテーマソングもキョーレツであった。
「見たか聞いたか名古屋のお城~ 五重櫓のその上で 金のシャチホコ 雨~ざら~し~ドンドン」
曲もキョーレツだが、このTVCM、ビジュアルもスサマジかった。
大広間で左右二列奥窄みにズラリと並んだ着物姿の仲居さんが全員で三角倒立しているのである。
仲居さんたちの着物の裾は軽く乱れ、白い襦袢がチラリズム...ウ~ン、おとなのお色気...
テロップ「三笠名物 美女のシャチホコ」
仲居軍団は逆立ちしながらも満面の作り笑顔をカメラに向け「お待ちしておりま~す」と
明らかに圧迫された声帯から呪文のように苦しげに唱和するのである。
お世辞にも美女と呼べるのは前三列止まり。後方に至るに従って本物のシャチに近くなる。
このCMの不条理さはエンディングで爆発する。
「仲居さん募集中」
自虐的オチがいかにも大阪的で私は完璧にノックアウトされるのであった。
「くいだおれ」にはテーマソングはない。あるのかも知れないけど、私は知らない。
テーマソングなしにこれほどの支持を得られたのは何故か?
「どうとん」や「千日堂」にはなくて「くいだおれ」にはあるもの...
キャラクター「くいだおれ太郎」の存在をおいて他にはありますまい。
店の料理の質よりも太郎君なのである。
かつての不二家もペコちゃんポコちゃんのキャラにかなり助けられたはずだ。
船場吉兆の女将も「ゆるキャラ」だったら世間の風当たりはましだったのではないだろうか。
「千日堂」にも一応「すっぽん太郎」というキャラクターが存在したのだが、
客としてはこれから鍋で茹でて食べちゃう食材本人がハッピを着て客引きをしている
というのはいかがなものか?ということで、これは失敗だったようである。
しかし、「くいだおれ太郎」くんもどうかなあ。
私と金森幸介の共通意見としては通天閣のビリケンさん同様
大阪の「いなたい」部分の象徴だったような気がするのだが...
かくほどに企業のイメージ・キャラクターは重要であるようだ。
世間が音楽よりビジュアルを重視している証拠である。
ユニバーサル・スタジオがディズニーランドに逆立ちしても勝てないのは
なんといってもあの”ワールドチャンピオン・オブ・ザ・キャラクター”の
ネズミくんの存在である。スヌーピーもエルモも充分可愛いが「キャラ立ち」が
ミッキーとは格が違うのである。まさに横綱の貫禄である。
U.S.J.が対抗策として鼠先輩をメイン・キャラに選定したという話は当然聞かない。
...というわけで、lefty-hiroと金森幸介が発掘した「もンのすごいキャラクター」
次回後編にて遂に公開であります。