エピソード66 秋深し

肌寒い季節となりました。まさに秋深し。
食欲の秋、読書の秋であります。
食欲の方はまあ、東海林さだおさんの「丸かじり」にでもお任せして、
今回は読書の方の話題で参りましょう。

大阪はミナミのいわゆるアメリカ村の片隅に”スタンダード書店”なる本屋さんがある。
金森幸介お勧めの書店である。
地上一階、地下一階にそれぞれけっこうな売り場面積を擁する書店である。

パソコンのスイッチをONにすればたちどころに如何なる情報もゲットできる昨今、
書店の生き残りもなかなかに大変である。
ここ数年、新規出店の話などとんに聞かないご時世に、かなりの資本を投じたと推測される
この書店の出現は、驚きでもあり、頼もしくもある。
一般の書店の書棚といえば、「雑誌」「文庫」「新書」「実用書」などに分類されて
陳列されているのが普通だが、ここでは「ファッション」「音楽」「映画」「料理」などの
ジャンルごとに分別され、雑誌も新刊も文庫もDVDもCDも同じ棚に並んでいるのである。
それに関連するグッズなども併売されている。
雑誌も最新刊だけでなく、厳選されたバックナンバーが平積みされていたりして
相当気合が入っているのである。
この手のスタイルの書店としては全国展開している”ヴィレッジヴァンガード”が有名だが、
「オトナのチョイスに耐えうる」という点では完璧に”スタンダード書店”に軍配が上がる。

地下のカフェでは未購入の本を持ち込んでコーヒーを楽しみながら読むこともできる。
なかなかに”デキる”と感じさせる書店である。
一歩外に出ればコテコテのナニワ・ワールドが展開されている中にあって店内はまるで
おフランスはおパリのカルチエ・ラタンの書店のようである。行ったことないけど。
先日、話題にしたジム・フジーリ著の「ペット・サウンズ」。実はさる女性からお借りした
ものだったのだけど、ブックカバーに”スタンダード書店”の文字があったのである。
それだけで彼女のセンスが偲ばれ、「う~ん、お茶でもご一緒していただこうかしら」
なんて健全なる好感度も生まれるっちゅうもんである。
女性から手渡された本がかつてのビニ本の聖地、京橋ヤマノウチ書店のブックカバー
だったりしたら、それはそれで「一手お手合わせ願おうかしら」
なんて妄想も生まれるっちゅうもんである。
ほんと人生イロイロ。オトコもイロイロ。オンナだってイ~ロイロ咲き乱れるのである。

こんな書店で本を選んでいたら”ノッティングヒルの恋人”や”ユー・ガット・メール”
みたいにステキな女性とお知り合いになれるかも知れない。
気分はヒュー・グラントである。

棚の一冊の本に同時に手を伸ばす知らぬ同士の男と女。
わずかに触れ合う指と指。
「あっ!ごめんなさい!そちらがどうぞ」
「い、いえ...あなたこそお先にどうぞ」 
B.G.M. エルヴィス・コステロ"She"

...なんてことからステキなLOVEに発展したりして。
その本が「家庭の医学 イボ痔の治療法」だったりして。
これがほんとの「おしりあい」なんちゃったりして。
(おシャレなスタンダード書店にそんな本はありません)

そして私のお勧めの書店は”イオンモールりんくう泉南”というショッピングモールの
二階にある旭屋書店である。
こちらの商品構成はまったく普通の旭屋書店と変わらない。棚並べにも変わったところはない。
「イボ痔の治療法」も当然ある。多分。
しかし、ロケーションが素晴らしいのである。
店内奥の壁面が一面のガラス張りになっており、窓際のデスクに腰掛けて
外の景色を眺めながら読書が出来るのである。
しかも眼前には大阪湾がいっぱいに広がっている。沖合いには関西国際空港。特に夜がお勧め。
サンテグジュペリなどを傍らにおき、夜間飛行を終えた機の灯を窓の彼方に眺むれば、
想いはまさにジェット・ストリームである。

とはいえ、私はほとんどこれらの書店で書物を購入しないことになっております。
大抵は図書館へのリクエストや古本屋にての購入でまかなっているのであります。
理由はもちろん季節に関係なくお寒いフトコロ具合でございます。
ああ秋深し 隣はナニをする人ぞ。それにつけても金の欲しさよ。