エピソード73 無謀なりアラカン
今週末の二日間、東京下北沢のラ・カーニャにおいて金森幸介のライブが行われます。
しかし、今まで何十回何百回と行われてきたお馴染みのライブではありません。
金森幸介、この二日間でなんと51曲の自作曲をギターを爪弾きつつ歌うのであります。
いつも「幸介さんのライブはちょっと短いんちゃうかえ?曲少ないんちゃうかえ?」
と陰で囁かれ、そんな声なきクレームに対して「聞きたくない聞きたくない」と
チャンバラトリオの南方頭(かしら)の如く耳を背けてきた金森幸介が...
しかも例によってHoy Hoy recordsの手によって同時録音もされるらしい。
もはや立派にアラカン世代に達した金森幸介にとって、無謀ともいえる企画である。
因みに”アラカン”とは”アラウンド還暦”の意である...らしい。
51曲を二日間に振り分けるとしたら、一日25or26曲と考えるのが妥当だろう。
一日目49曲 二日目2曲なんてバランスだとどっちもうれしくないし。
一晩に25曲を歌いきるには相当の体力と集中力を要する。
ライブで譜面台を前に歌詞を確認しつつ演奏するシンガーをたまに見かけるけれど、
私はどうも感心しない。台本持って舞台に立つ役者がおるかっちゅう話である。
プロなら自分の歌の歌詞ぐらい覚えとけっちゅう話である。
プロでも最近はスクロール・モニターなんて不届きなものを使ってたりするけれど、
我らが金森幸介、哀しきビンボー・ツアーにそんなハイテク・サポート装置を望むべくもなく、
身も心もこれ集中の塊りでステージに臨まなくてはならないのである。しかもアラカン。
昨日の朝食のメニューさえ忘却の彼方であるアラカン。
少々の階段を上るのにさえ息がきれてしまうアラカン。
そのくせ、若い女性アナや女優さんの名前は一瞬たりとて忘れないアラカン。
ミニスカートが目の前にあれば、なんぼでも階段を上れるアラカン。
そんなアラカン・シンガー金森幸介にとって、
今回は正真正銘無謀なトライアスロン・ライブといえるだろう。
金森幸介はこの二夜に命を賭けているのかも知れない。
観客は金森幸介の壮絶な最期を目撃するかも知れない。
金森幸介は死んでもギターを放しませんでした。遂に彼は伝説になる。平成の木口小平である。
いや、年齢層を考えれば客席にも殉死者が出ないとは限らない。
万一の場合を考慮して、楽屋には医師と看護婦が待機しホールにはAEDが設置されると聞く。
出かけられる方には酸素缶と粗相後の下着の替えの携帯を強くお勧めする次第である。
二夜で51曲。前売り各一日3200円 通しチケットは6000円である。
通しで聴けば一曲の値段はほぼ118円の計算になる。
そんな計算してどうする!という声も聞こえるが、エコポイント開始に向けて
省エネ性能四つ星以上獲得の為に重要な問題なのである。
エロポイントなら確実に五つ星獲得だけど...
118円あれば、うまい棒なら11本買ってお釣りがくる。チロルチョコのきな粉味を混ぜてもよし。
キャベツさん太郎etc.のさん太郎シリーズも捨て難い。
通しチケット購入代金でうまい棒が600本...大人買いの極致の恍惚を楽しめるのである。
それでも、うまい棒明太子味にもチロルチョコにもよっちゃんイカにも見向きもしないで
ラ・カーニャに向かわんとするあなた。貴方貴女こそ本物の大人である。
心地よき春宵宴、金森幸介音楽人生の集大成、現代音楽のシン・デッドラインへようこそ
たとえ一曲分でガリガリ君が二本食べられたとしても...当りが出たらもう一本。