エピソード81 give&takeについて

金森幸介の周りの方々はみなさん非常に親切な方ばかりであります。
再三ここでご紹介している大人物タカハシさんもその中のお一人ですが、
金森幸介はとにかくよく頂き物をする。彼自身の人徳に因るところが大きいのでしょう。
私はそのオコボレに与ることが多々あり、まことに恐縮の極みであります。

名古屋フリコンのメンバーであるHさんは長野県の高原でカフェを営んでおられるのだが、
夢のようにおいしいパンを送ってくださった。
「夢のようにおいしいパン」 我ながらバッチリ的を得た表現である。
名古屋在住のホッコリ派ペダルスティ-ルギタリストP.J.さんは
いつも心のこもった品を送ってくださる。私の大好物の味噌煮込みうどんなどなど。
福井県在住のパンク派ペダルスティ-ルギタリストN君ご夫婦は
いつも素敵なプレゼントを送ってくださるし、お家に訪れるといつも歓待してくださる。
B.M.T.のさんくすホールのOさんはあまりライブに行けない私のために
わざわざライブ音源を送ってくださる。
ミナミ在住の美少女M嬢は金欠の私には手の出ない新譜CDを焼いてくださる。
考えてみれば、みなさん大人物である。大人物バンザイ!
大人物サークルの中心人物、金森センセイもいつもパンチのきいたCDを焼いてくださる。
「パンチのきいたCD」てなんやの?我ながらサッパリ的を得ない表現である。

金森幸介関係で今までで一番愉快な頂き物はといえば、こんなエピソードを思い出す。
ある暑い夏の日、The Mellowの野外ライブを終え、我々はメンバーの一人であった
N君を自宅まで車で送った。ニコニコ笑顔の奥さんが玄関口に出迎えに現れ、
「お疲れ様でした~。これ、帰りのお車の中で飲んでくださいね」と紙袋を下さった。
ノドがカラカラに渇いていた我々は「やれ、うれしや」と帰路、さっそく紙袋を開けた。
そこに入っていたのはなんと、ビン入りのカルピス原液であった。

そんなわけで私はまことに果報者であります。
しかしその私はといえば、この素晴らしき方々に今のところなにもお返しを出来ていない。
不義理もここに極まれりであります。大人物のみなさんに対し、小者も小者、小者馬子唄である。
ビンボーヒマなしなんて言い訳は出来ない。誰だっていそがしいといえばいそがしいのだ。
みなさん、そのいそがしい中をかいくぐって心を尽くしてくださっているのだ。
あまりに色んな方々の温情に甘えている私は、あらゆる方角に足を向けて寝られない。
だから私は立ったまま寝ています。
もし恩義にあずかった方が地球の裏側方面、ブラジルなどに行かれたりしたら
私はもう逆立ちして寝るしかありません。

人と人との交わりはあくまでもgive&takeでなければならない。
与えっぱなしでも与えられっぱなしでもいけない。
takeしっぱなしの私はここで面白い話をお届けすることでせめてのgiveを... と思うのだが、
それとて金森センセイがライブのMCなどで語る話の面白さには足元にも及ばない。

会話もgive&takeで成り立っている。与えたり与えられたりである。
とんとんとんからりと隣組である。
ある日、金森幸介はかかりつけの町医者の待合室で順番を待っていた。
会計の窓口では一人のおじいさんが診療費の支払いを終えたところであった。
白衣を着た会計の女性が満面の作りスマイルを浮かべ健康保険証を老人に返しつつ
「○○さん、今日はお誕生日ですね~。今日が良い日になったらいいですね~」
と猫なで声で言った。
その模様を見ていた金森幸介は「心にもないこと言うなっちゅうねん。
ちゃんちゃらおかしゅうてヘソが茶沸かすっちゅうねん!」と心の中で嘲った。
しかし歯の浮くようなおべんちゃらをtakeした当の老人はがま口に釣り銭をなおしながら、
何事もなかったように「へえ、往生しまっせ」と返したのである。
金森幸介はあまりの可笑しさにのけぞりそうになった。
「見事なり!さすが年の功!」
ボケ&ツッコミも一種のgive&takeであるが、この老人は超一流、名人、マスターである。
ご存知の通り「往生しまっせ」は大木こだま・ひびきのギャグである。
しかし、この老人の今回のそれにはその他もろもろの意味あいがこめられているのである。

金森幸介が町医者の看護婦の慇懃無礼などまだまだ可愛いものだと思い知ったのは
それから数週間あとのことであった。
彼はとある国立大学病院のロビーにいた。なんぼほど病院通とんねん!身体弱いんか!
この病院では治療費の支払いは機械で行うようなのである。
まあ、人件費削減のため、それもしかたなかろうと、
自分の診察カードを機械に入れ、表示された金額を現金で支払った。
無愛想にジャラジャラと釣り銭口に返還された小銭をサイフにしまいながら
その場を立ち去ろうとする金森幸介に、背後から女性の声がした。
「オダイジニ~」
生気なく無味乾燥なその声は支払機が発する合成音声であった。
振り返り、しまいかけた小銭を機械に投げつける金森幸介。
「ナメとんか~!ワレ~!大きなお世話やっちゅうねん!」
彼の投げ銭が与えた衝撃で誤作動を起こしたか、支払機は反復した。
「オダイジニ~」「オダイジニ~」「オダイジニ~」

リノリウムの床に散らばった小銭を拾い集めながらも金森幸介の怒りは収まらない。
「さすが白い巨塔やがな。サイテーのセンスしとるがな。
静かな深夜の街に響き渡るエロ本自販機の『アリガト~ゴザイマシタ~!』より
何百倍もタチ悪いがな。あれも相当恥ずかしいもんやけどな。
医療に従事する者ならば、いちばん心をこめて伝えるべき『お大事に』を
事もあろうに機械に言わせるなんて...」
数日後に自らがこの権威主義病院の研究用モルモットにされるとは
夢にも思わぬ金森幸介であった...これ以上は私の身が危なくなるので書けまへん。
ほんま、往生しまっせ。無茶いうたらアカンわ~。