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エピソード84 うわのそら床屋

金森幸介はいつ会ってもスッキリとしたヘアスタイルをしています。見事な短髪です。
アラカン世代にしては清潔感漂うナイスガイと評してもよいでしょう。
森昌子、小野伸二、アジャ・コング系のウェーブが少しばかり特徴的でありますが、
結論から申せば、クセ毛で硬毛でイボ痔で意固地な人なのでありまして
実生活でも韻を踏むことを忘れない天晴れなシンガー・ソングライターなのであります。
NA LEOの”ラム・イン・コカコーラ”は心地よく踏まれたRhymeが涼しげなカリプソ・ナンバーで
lefty-hiro、これからの季節のヘヴィーローテーション・ナンバーであります。
アジャ・コング嬢の本名が”宍戸江利花”っていうのもなかなか涼しげで好ましいですね。

私もクセ毛で硬毛なのでちょうど今時分、梅雨時の湿度の高い季節にはいつも往生する。
私の場合、金森幸介ほど頻繁にヘア・カットにいかないので伸びた髪が
湿気を含んでボワ~ンと膨らんでしまうのである。ほんとに往生するのである。
家人からは「ソロになってからの宮史郎」という非常に的を絞った評価を得ているのである。


先日、大阪は玉造のさんくすホールでのライブのリハーサルが終わり、
スタッフたちと共に軽く食事をとっていた金森幸介に傍らのtambourine manが突然語りかけた。
「幸介さんって、髪の毛伸ばしたら、アフロになるんとちゃいます?」
tambourine manはその場で金森センセイに蹴り飛ばされたが、
私を含むその場の全員が心の中でtambourine man発言を支持したのである。
瞬時にイメージしたのは"Say You Say Me"を歌うライオネル・リッチーであった。

 
サイレント印象派シンガーがなんぼなんでもライオネル・リッチーになっては困るので、
金森幸介は頻繁にヘアーカットに出向く。
ここ十年以上、同じ馴染みのお店で散髪をしてもらっているのだ。
大阪はミナミに店を構える「T」 オーナーはJちゃんという女性である。
私も大阪市内に住んでいた頃にはよくお世話になったが、衛星都市に越してからは
とんとお見限りになってしまった。Jちゃん、元気?
金森幸介がセットチェアーに腰掛けると、Jちゃんは必ず毎回
「コースケ、今日はどんな感じにする?」と訊く。一応必ず訊く。
アラカン世代にもトレンドは気にかかる。
タカラジェンヌと精神的急接近中の今となってはなおさらである。
「そうやなあ、今日はちょっと長めに...うん、やっぱ今旬ということで
今回は小栗旬風でお願いしよかな。」とコースケ。
「Ok!小栗旬風やね~!わかったよ~!」と了解し小気味よくハサミを振るい始めるJちゃん。

Jちゃんはシザー・アクション以上にトークも達者である。
カット中もずっと喋り続けるのである。最初ハサミ80-トーク20だった力配分が
ハサミ50-トーク50になり、いつしかハサミ20-トーク80になる。
しかもその間に鼻歌もまじるのである。
「♪フ~ン、フフ~ン、さっき、GONTITIの三上さんが来はってねぇ...」
「あっそう...」
金森幸介は愛想ていどに話に相槌を打ちながら己の前の鏡が気にかかってしかたがない。
「...おい!分かってるやろな。小栗旬やぞ。小栗旬!花より男子...」と心で呟く。
しかしJちゃんのハサミはもはやその物自体が生を持ったように髪を切り上げていく。

かくして、数十分後に金森幸介は目の前の鏡にいつもと寸分違わぬ
ピッシリ短髪の自分を見つけるのである。
「はい、お疲れさん!いつも通り、おっとこ前になったよ~!」とご満悦のJちゃん。
「いつも通りやったらあかんねんがな...小栗旬はどこ行ったんや...
こっちがシュンてするっちゅうねん。この前はジョニー・デップや言うたのに
結果はオードリーの春日やがな。お前がシザーハンズになってどないすんねん!」
と心中毒づき、涙目になるも後の祭り。「あ、ありがとう。ええ感じやわ。涼しそうで...」

金森幸介のライオネル化を阻止してくれているのはJちゃんだったのです。
ある意味強烈な幸介ヘッズ、Jちゃんとそのハサミに乾杯!
俺の宮史郎化も誰か阻止してくれ~!

実際のJちゃんは、腕もセンスも文句なしのカリスマ美容師(死語)ですのでよろしく。

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