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幸介からのメッセージ2004/03/10

# Doug Sahm & Friends
     " The Best Of Doug Sahm's Atlantic Sessions "

むずかしいことはしない。
それが、いちばんむずかしい。
ダグ・サームが知っていたのはたぶんそんなことだ。

「テキサス・トーネイド」でアルバムはスタートする。
僕はこの曲のすべてが好きだ。曲、唄、演奏、アレンジ、録
音、プロデュース。楽器の音色、フレージング、アンサンブ
ル。声、コーラス、唄い方、唄いっぷり・・・。
僕は曲に合わせてドラムが叩ける。ギターやベース、ピアノ
やオルガンが弾ける。寸分の狂いもなくだ。もちろん唄える
し、コーラスだって・・・。

この頃のダグ・サームは、まだずいぶんと若い。でも、すで
にもう達人だ。名人だ。人なつっこくておおらかな音楽。そ
れはきっと、まるごとこの人の人間の大きさから来ているも
のに違いない。

完璧なスキ(隙)。もしそんなものがこの世に存在するとすれ
ば、それがここにある。

音楽は、機械じゃない。
だから完璧であるためには、むしろネジのひとつやふたつは
しめ忘れなければならない。
ダグ・サームが教えてくれるのはたぶんそんなことだ。

# Blossom Dearie " Blossom Dearie "

季節が冬と春を行きつ戻りつする頃になると、このアルバム
によく手が伸びる。

ブロッサム・ディアリー。いい名前だ(本名らしい)。

ふわふわと、まるでどこかに重力を置き忘れてきたかのよう
な唄声が、明日きっと出会うはずのそよ風のように耳もとで
揺れる。

1956年に録音されたヴァーヴ盤。直訳すれば、「古いジャズ」
ということになる。でも、これは、古くもなければ、ジャズ
でもない。時を超える「可憐な音楽」だ。彼女はいつも、明日
きっと出会うはずの恋人のようにそこにいる。

ヒッチコックの映画に出てきそうなメガネをかけた若い女性
(メガネをはずすと美人に早変わりする)が録音用の大きなマ
イクの前でピアノを弾き、いま唄いはじめたところ。そんな
カヴァー・フォトを眺めながら耳をすませると、ほら、静か
な音楽が聞えてくる。

春が来た、かな・・・。


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