エピソード12 みんなクールなんだから...

白井幹夫氏はみなさんもご存知の通り、ハイロウズのキーボーディストだ。
金森幸介のCDで聞かれる流麗かつ力強いピアノにはいつも感動させられるし、
それはそれで、充分 ROCKなのだが、
「ハイロウズでのステージってどうなんだろう?一度見てみたい。」
というのが私の積年の思いだった。

その願いが叶えられる日が来た。
白井氏が我々を大阪公演に招待してくれたのだ。
その日、同行したのは、幸介氏、シンガーソングライターのJ.A.氏、
音響のZ氏夫妻(これって匿名になってる?ダイエーのO監督なんかもつらい)、
そして私だった。

ハイロウズの事務所の人が我々に用意してくれていたのは
客席ど真ん中のPAブース横という最高の席だった。
「いい席っすねえ。早く座っちゃいましょうよ。ご隠居~」
とダンゴを喰いつつ脳天気な私を、とっさに制する幸介ご老公。
「いや、ヒロさんや、この席はやめて、一番後ろで立って見ましょう。」

その発言の真意は、開演後すぐに理解できた。
メンバーが登場するやいなや、客席の全員が立ち上がり、足踏みを始める。
会場全体が竜巻に持っていかれるかのように揺れる。揺れる。
そんなツイスターの真っ只中に50ヅラさげたオッサンらが
放り出されたら...考えただけでゾッとする。
一番後ろの通路で立っていた我々は間一髪、難を逃れた。

ノリノリの演奏(死語?)が続いた中盤にさしかかり、
ムンムンの熱気(恥語?)に疲れた幸介氏達はロビーに出た。
私は一人で若者達の中、くいいる様にステージを見ていた。
「ウ~ム やっぱり白井さん、カッコええな。」
そう思った次の瞬間、私の目は信じられない光景を目撃する。

ボーカルの甲本ヒロト氏が、ズボンのジッパーを下ろしたかと思うと
いっきにズボンを足元まで脱ぎ捨てたのだ。
しかも下着を着けていないようで、大事なモノが丸出し状態に...
それでもヒロト氏は何食わぬ顔で熱唱している。
リズムに乗って右へ左へブラブラしてるのに...
私のショックはそれだけで終わらなかった。
ステージのメンバー全員が、まるで何事も無かったかのように
演奏を続けているのだ。
真ん中で、お仲間がブラブラ状態なのにもかかわらず、
誰も、なんのツッコミもせずに、黙々と演奏を続けている。
なんてクールなんだ!
そしてその曲が終わり、遠い目をしたヒロト氏がポツッと一言
「...ちんちん...」
言われんでも分かっとるわ~! な、なんてクールな奴らなんだ~!!

ノックアウトされた私はロビーで一服していた幸介氏らの所へ行き、
「い、今、ヒロトくん、チンチン出してたで!」 と興奮して報告した。
「あ、そう、そら良かったね。」と幸介氏。
い、いや別にうれしくはないんやけど...
こ、こいつらも、なんてクールなの~! それとも俺が世間知らず?
大体、今の世の中、チンチンを軽視しすぎちゃうの?
女性がステージでこんな事したら、そんな冷静でおれんやろが~
あのなあ、古来から、「道祖神」とかいうて、御神体やったりしたんやぞ~!
男性の復権の為に俺は断固戦うぞ~!!1.2.3.ダー!
って、俺、なに興奮してんの?