エピソード21 ドック・オブ・ザ・ベイ
♪夏が来~れば思い出す~ 10年以上も前の出来事。
記憶は曖昧で、まさに「真夏の夜の夢」みたいなお話です。
その頃、金森幸介は主に「金森幸介&The Mellow」というバンドで活動していました。
私も彼らと行動を共にする機会が多く、色んな経験をしました。
今回はそんなエピソードのひとつです。
ある年の夏、The Mellowにイベントへの出演依頼がありました。
場所は三重県津市。
伊勢湾に面した造船所のドックを会場にしてイベントを催すと言うのです。
言わば、町おこしのお祭り的なものだったのでしょう。
その昔、津に「水平線」というライブハウスがあり、
メンバーのI氏が運営していました。
多分、その関連からの依頼だったと思います。
The Mellowはメンバーが10人以上という大所帯で、
三々五々、車やバイクなどで会場に終結しました。
会場に到着して驚いたのは、その規模の大きさでした。
10階建てのビルほども高さのある壁に四方を囲まれた広大なドック。
その海水を全て抜き、イベント会場が特設されてありました。
壁の一辺の下にステージの櫓が組まれ、あとの三辺に沿って
たくさんの屋台などが出店されていましたが、
なにせ野球場が何個も入りそうなドックなので、
ステージの上からは、屋台も人も豆粒ほどにしか見えません。
まさにビッグイベント!だったのです。
しかし、イベントのタイトルを聞かされた瞬間、全員脱力。お口アングリ。
「レッ津deドック」
商工会議所のお偉方とかが、喧喧諤諤の議論の末、決定したのでしょうか?
恐るべし!津!
会場の雰囲気はフランスの田舎町を転々とするカーニバルといった感じ。
出演を待つ間、ステージ横のテントで中華料理などが振舞われ、
まさに酒池肉林のもてなし。空には満月。
The Mellowの出番は色々な出し物の後の大トリらしいのですが、
夜はどんどん更けていくのに、なかなか出番が告げられません。
「危ない宗教ちゃうやろな?」
「このまま太らされて、最後に全員喰われるんちゃうか?」
「そういうたら主催者のオッサン、佐川くんに似てたな。」
「この肉ダンゴ、馬糞やったりして」
「ほな、やっぱりギャラは葉っぱか?」
「しかし遅いな。大トリにもほどがあるで。」
「え~大トリケイスケでございます。ポテチン!」
あまりのデカダンな進行に壊れかけるメンバー。
結局演奏が始まったのは、伊勢湾が朝焼けに染まり始めた早朝でした。
移動の疲れと眠たさと満腹感で、ステージ上は、もはやトランス状態。
気が付いた時は、金森幸介以下全員近くの海水浴場に寝ていました。
普段海が大好きな金森幸介でさえ、泳ぎもせず、ただ砂浜で陽に灼かれておりました。
あれは実際の出来事だったのでしょうか?