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エピソード49 タカハシさんの中国みやげ その二

金森幸介に紹介されたのはタカハシさんという男性であった。
奇特にも幸介オフィシャルウェブをいつも閲覧していらっしゃるとのこと。
しかもこの私のコーナーの拙い文章も欠かさず読んでいただいているらしい。
ええ人である。大人物である。誰や?サエないおっちゃんなんて言うた奴は!
「偶然、今日これ買ったんですよ」とタカハシさんが差し出したのは、なんと
以前ここで私が紹介したカズオ・イシグロの「日の名残り」の文庫本であった。
金森幸介が私に薦め、私から再発信された情報に対して
密かに、しっかりとレスポンスして下さる方がいらっしゃったのである。
うれしい限りである。私は幸せな男である。
しかしカズオ・イシグロも宣伝費としてちょっとは印税を回してくれんもんかね。

ちょうど松が明け正月気分も抜けてきたある夜、我々は初銭湯に出かけた。
今夜はいつになく客もまばらである。
トップリとお湯につかり、年頭にあたってのあれやこれやを黙想する我々。
充分温まり湯船から出て洗い場へ向かう。
ド近眼の私はメガネを外すとほとんどなにも見えない。
湯気に煙ってボンヤリと洗い場のイスの上に門松が立ててあるではないか。
「なんやねん?松も明けたっちゅうのに。しかもこんなとこに...」
と接近した瞬間、門松がなんと!立ち上がったのである。
よく見ると、叔父貴系パンチパーマの御仁の背中に描かれた極彩色の絵画だったのである。
間一髪命拾いである。豊中インター近くの夢の天然温泉、やはり油断は禁物である。

この夜、別れ際に金森幸介から手渡された物があった。
「これな、タカハシさんから中国みやげで貰おたんやけど、良かったから
hiroにも貸したるから観てみ。」
帰宅した私はさっそく袋を開けてみた。DVDのようである。
タイトルは「保羅・羅煮斯 格拉斯可演唄会」
当用漢字にない文字もあるので大体の雰囲気をお伝えしたが、まあこんな感じの漢字。
「なんじゃ、こりゃ?中国みやげのDVD...ムフッ!タカハシさん、アンタも好きねえ
謝謝~ニイハオ、全裸的女子十二楽坊無修正動画...熱烈歓迎!ムフッ!」
家人が寝静まる中、さっそく再生機に入れ、年末にジャパネットたかたの塚本君から
購入したばかりのアクオス37インチ亀山モデルの音量を低くして再生してみた。
金利手数料はジャパネットが負担してくれるからうれしい。
映し出された映像はさほど広くないホールのステージであった。
バンドがイントロを演奏し始め一人の男が現れた。往年の尾崎紀世彦かと思ったら
ポール・ロジャースだった。
かなり最近のコンサートの模様のようである。しかし保羅・羅煮斯って...むりやりでんがな。
そして「格拉斯可演唄会」は"Live in glasgow"であった。
こういっちゃなんだけど、最近のパチモンテーマパークやらの騒ぎで
「中国語って怪しい」イメージが出来ちゃったみたい。じっさい怪しいけど。
しかし、このDVDの中のポールはやっぱり素晴らしい!独特のコブシも健在である。
バンドがこじんまりとまとまり過ぎてる感はあるけど、フリーやバドカンと較べるのは
そもそも酷というもの。
フリーから30年以上は経ってるというのに声量は少しの衰えも見せていない。
金森幸介曰く、「全部調べたけど、キーもオリジナルと一緒や。信じられん。」
わざわざ全部調べるオタクぶりも信じられんけど、さすがポール・マニアである。
"ALL RIGHT NOW"でベーシストがベースを持ち替えるシーンがある。
アンディ・フレイザーはチョーキングを多用するため、半音ピッチを下げた
GIBSON EB-3を使用していたのは有名な話だけど、途中のベース・ソロでハーモニックスを
使うこの曲のためだけに今回のベーシストはハーフドロップのベースを用意したと思われる。
このことからもポールがオリジナルのキーで歌っているのは明白だ。
って、お前も相当オタクや!

ポール・ロジャース、健在なり!
会場となったグラスゴーの観客たちへのインタビューがまたいい。
いい塩梅で歳くった連中が、フリーやらバッド・カンパニーが好きで好きでたまらん!
て感じが好感持てまくり。
グラスゴーといえば中村俊輔選手が所属するスコティッシュ・プレミアムリーグの
セルティックFCのホームタウンである。
この観客たちを見ていると、俊輔もいい街に恵まれたなと思ったりもして。

タカハシさん、ありがとう!あなたはほんとに大人物です。
できたら今度は全裸的女子...もお願いネ。

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