エピソード6 オマリーを聴きながら

金森幸介ご贔屓の阪神タイガースが快調である。
みなさんもご存知の通り、タイガースのファンは熱狂的だ。
自チームのラッキーセブン攻撃時には例の岡本理研ジェット風船を
観客席のほぼ全員が甲子園の夜空にひゅるるる飛ばし、
チームが勝利すれば、応援歌を球場も割れんばかりに熱唱するのである。

この応援歌こそ、そう「六甲おろし」である。
♪ろ~っこうおろ~しに~さ~ぁぁそぉぉと~ってあれだ。
軽快なマーチのリズムに乗って歌われるこの歌、
正式には「阪神タイガースの歌」というらしい。
そのまんまである。何人かの人たちによって音源化されているようだが、
誰のがオリジナルとかいうのはここでは問題ではない。
最近ではジュリーこと沢田研二が「ROCK 黄 WIND」(六甲おろし!!)
というタイトルでむりやりロック調アレンジでCDを出している。
ロック調というのがトホホである。
だいたいタイトルに”ROCK”とある曲がロックであったためしがないし
”・・・ブルース”がブルースであったこともない。
あっ!”摩天楼ブルース”っていう曲があったのを忘れてました。
ギョエ~ッ!”パラノイア・ブルース”もあった...

数多存在する”六甲おろし音源”の中でも私の中でピカイチな存在が今回ご紹介する
トーマス・オマリー特命コーチが何年か前に世に問うた(?)
「DYNAMIC ENGLISH六甲おろし」である。
タイトルに偽りなし!これはトンデモなくダイナミ~ック!である。
ほとんどレコード会社の暴挙と言っていいかも知れない。
なにがって?音痴なのである。
音痴といってもそんじょそこらのとは次元が違う。日本レコード史に残る音痴なのである。
浅田美代子? ノンノン!!能瀬慶子? 可愛いもんスよ!
細野晴臣が自分の作曲経歴から抹殺した「風の谷のナウシカ」の安田成美ちゃん?
オマリーに比べればみんな達者である。
だってバック演奏がなければなんの曲かサッパリ分からないテイタラクなんだもん。
1番は日本語、2番は英語で歌われるこの歌、
日本人の欧米音楽へのコンプレックスを払拭してくれる。
聞けばあなたも思うだろう。「外人にも音痴な奴いてるんや!」

しかしである。私はこの歌がすごく好きなのである。聞く度に元気が出るのだ。
ニンマリ、ムププッなのである。彼の人柄が偲ばれるのだ。何故か切ないのだ。
「野球好きやねんやろなあ。タイガース好きやねんやろなあ」ってね。

歌唱力はあるに越したことはないと思うし、プロとしてそれを磨くのは当然のことだろう。
でもどんな音楽であっても、さきほど言った”切なさ”がなければ完璧じゃない。
金森幸介が「ジョージ・ハリソンやクリス・レアみたいなチュートハンパなミュージシャンの
片手間っぽいスライド・ギターが好きやねん」と言ったことがある。
誤解されないようフォローを入れるけど、
決して彼等は中途半端じゃないし、もちろん片手間でもない。
私もそう思う。特に自分が歌唱する楽曲での彼等のギターは自身の音程に合わせて適度な
バッドチューニングがなされている。これが切ない。
「夜空ノムコウ」という曲がある。ご存知の通りSMAPのヒット曲で
二人のシンガーソングライターの共作である。
作詞のスガ シカオ、作曲の川村 結花の二人共にセルフカバーしているが、
どちらも何故かSMAP版ほど心に沁みてこなかった。切ないとは感じないのだ。
二人の歌唱力、表現力をアイドル・グループSMAPと比較するのは愚の骨頂だ。
なんせあの中居クンを擁しているのだよ SMAP!!
でもあの曲の切なさがSMAPの青さにジャストフィットだったことは間違いない。
どうでもいいけどスガシカオは”須賀鹿男”か?そうだったらけっこう切ない。

キースのギターのピッチがもっと正確だったら、
ストーンズだってただの凡百バンドだったかも知れない。

音楽に切なさが必要なように、切なさのない人生だってきっと味気ないものだろう。
「切なさは人生のバッドチューニングかもね...」
”お~おおお~ は~んし~んタイガ~ス”
オマリーのキョーレツな歌を聴きながら、そんな事を思った梅雨入りの日であった。