TRIP#2「 サイケ」 psychedelic
「楽園仲間」が麻雀をやるというので驚いた。
昨年名古屋で行われたフリーコンサート
「ロストパラダイス~金森幸介in森林公園」のスタッフ達だ。
「ただ気持ちのいいコンサートをあの場所でやりたいだけ」の彼らが、
利益を追求せず、毎年のようにでる赤字を自分たちでかぶっても
入場無料にこだわる、どちらかといえばボ~ッとしたそんな彼らに、
経済性や狡猾なテクニックを必要とする麻雀は結びつかなかったのである。
きっとおかしな麻雀をしているに違いない、たとえば自分で考えたサイケな役であがるとか、
そう思いこんで何かBGMでも用意していこうと思った。
サイケと言えば「ピンクフロイド」だ。
その昔、彼らの初来日コンサートで金森幸介は始めから終わりまで寝ていたらしい。
そういえば昨年11月に2枚組ベストアルバム「エコーズ~啓示」がでた。
デビューから今日までの作品を、メンバーたちがバランスよく選曲した全曲継ぎ目なしの2時間35分!!
BGMはピンクフロイドに決定だ。
「ピンクフロイドに決定!」と叫んで、議長は机を木槌で連打した。ガンガンガンガンッ・・・・。
その音が部屋中にこだまして、人々は立ち上がって拍手をする。
すると叩かれていた机は、いつのまにか樽酒に姿を変え、ふたが大きく二つに割れると、
中から日本酒が勢いよく飛び散り、同時にくす玉が開いて金銀の紙吹雪が舞う、
「祝BGM決定!」と書かれた垂れ幕が降りて、
高らかにファンファ--レが鳴り響くと、何千人もの大歓声が沸き上がる中、
城の門が音をたてて開き中から絢爛豪華な装束を身にまとった
騎馬国ロ-ハンの君主セオデン王が、白馬にまたがってゆっくり姿を表すと、
再び観衆の大歓声、王は握りしめた剣を天に向かって突き上げ「◯ッ?◯◯ァ~!!」と叫ぶ。
しかしその言葉はあまりの大歓声にかき消され、彼が乗った馬だけがその言葉を聞いた。
馬は怒っていた。
「エエ~ッ、ここでそれはないやろ~!あかんっ、やり直しや!」
馬は方向転換して門の内側へ戻って行き、音をたてて門が閉められると大観衆が静まった。
馬「自分あれはないわ」
王「ゴメンゴメン。イケる思てん。」
馬「ここは一発目で絶対つかまなあかんねんからな、たのむでほんま、俺らもう新人ちゃうねんから」
王「ゴメンゴメン、次は大丈夫やから」
再びファンファーレが鳴り緞帳があがる。
舞台の袖で控えていた馬は思った。「そういえば麻雀どうなった?」(つづく)
(文中の馬と金森幸介は無関係です)
麻雀は普通だった。まともな麻雀などしたことのなかった僕は、
座るたびにハコテン寸前になったのである。ボ~ッとしていたのは僕の方だった。
中にはBGMがピンクフロイドになると調子のでる者までいて恐るべし「楽園仲間」であった。
「楽園仲間」といえば、長野県某村に自分でログハウスを建てて移り住んだ人がいる。
ピンクフロイドのコンサートで寝ていた金森幸介が、
毎回出場していたフリコン「夏の楽園」をやらなかった年、
「楽園仲間」はそのログハウスで幸介のライブを企てた。
仲間が集まり機材が持ち込まれリハーサルが始まると、いつのまにかそこは「楽園」と化していた。
屋根まで吹き抜けになった広いリビングルームの響きはおもしろく、
音響担当の僕は音作りに懲りすぎてしまったらしい。
スペ-シ-なエフェクトもふんだんに使った。
ライブ終了後に金森幸介は僕に言った。
「俺はピンクフロイドか?」(寝てたくせに)