TRIP#3 PLUS 「寓話」
パカラ ン!パカラン!パカラン!パカラ ン!
パカラッ! パカラッ! パカラッ! パカラッ!
辺境国の王、セオデンが白馬を馳せてローハンの草原を行く。
モルドールから立ち上る暗黒から、不吉な風が吹いてくるが
センゲルの子にしてローハンの君主はこれっぽっちもひるまない。
鎖かたびらは鈍い光を放ち、馬のたてがみは風になびいている。
中つ国一の駿馬は草原を走りながら、遠い記憶をたどっていた。
この場所が自分の中の何かを呼び覚まそうとしているのだ。
その時、王の声が聞こえた。
「へぇ~、入場者1000万人突破かぁ、すっごいなあU・S・J」
「自分、新聞読んでんのちゃうん?人の背中の上で・・。馬やけど。」
「行ったことある?映画のワンシーンに入って冒険できるらしいで」
「USJ行かんでも人生の大冒険でフラフラやっちゅーねん」
「まあ、若いもんが行ったらええんかな、あんなとこは」
「そうそう 俺らの人生の方がよっぽど絶叫マシ-ンや」
「もっと俺らにも楽しめそうなアトラクションがあったら行ってもええけどな」
「ええっ、どんな?」
「たとえば“マルコヴィッチの穴”があるとか、“スモ-ク”のタバコ屋行ったら
ハ-ヴェイカイテルがごっつええ話聞かしてくれるとかね」
「ああ、それやったら行こかな」
「行くんかい!」
「あっ!ここっ、ここっ!」
「えっ?どこ、どこ?」
「ここっ!」「どこ?」
「ここや!」「どこや?」
「ここが俺の生まれた場所や」
「ええっ!こんなとこで!な~んにもないがな!」
「ほっとけよ、だいぶ変わってるっちゅ-ねん、昔は市電もここまで来てたしな」
「へえ~、そうかあ、しかし何にもないなあ~」
「何回も言うな!」
はるか東方、人の国ゴンド-ルの上空に不穏な煙が上がっている。
急げセオデン王!滅びの時が近づいている。
(この物語はフィクションであり、登場する動物と金森幸介は関係ありません)