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TRIP#6 「勘違い」

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デヴィッド・リンドレイが小皿に醤油を注ぎ、箸でわさびをまぜて
一緒にたべようよ、と目の前にある寿司を金森幸介に勧めている。
4月16日、名古屋のライブハウス・得三でのことだ。
腹をすかせた金森幸介が寿司をねだったわけではない。
4時に得三に現れたリンドレイは、すぐに金森幸介を見つけると
誰とも挨拶を交わさず、幸介と同じテーブルにつき、
用意された寿司を、久し振りに会った友人に勧めたのだ。

ステージではパーッカションのウォーリー・イングラムが
サウンドチェックをしていたが、リンドレイはそのまま
自分のサウンドチェックまでず~っと幸介と話し込んでいたのだ。
このコーナーを読むような人ならご存知かと思うが、デヴィッド・リンドレイは
76年にリリースされた金森幸介のシングル「かけおち」に参加している。
今回の来日で名古屋・得三でのスケジュールを知り、「名古屋で見なはれ」という
僕の誘いにのり、金森幸介はのこのことやって来たのである。
以前から幸介は、リンドレイとはごっつ友達みたいに言っていた。
しかしそれは自分をビッグに見せようと嘘をついているのだと思っていた僕は
それを確かめるべく、かれらの周り半径2メートルの円を描きながら歩き回り
どんな会話が交わされているのか聞き耳をたてた。
話はほとんどリンドレイがしていて、幸介はうなずくばかり。
ときどき幸介もぼそぼそと英語で何か言っているがほとんど聞き取れない。
どうでもいい時には声が大きいのにこういう時は小さいのだ。この男は。
何をしゃべっているのかさっぱりわからない。だが僕は納得した。
リンドレイは小1時間、スタッフとも誰とも一言もしゃべらず、幸介だけと話した。
おまけに幸介はリンドレイが書いたばかりの歌詞(未発表)までもらっていた。
確かにごっつ友達らしい。
納得したので長年のファンだった僕は、サインをもらうことにした。
そしてお礼に昨年の名古屋のフリコン「ロストパラダイス」のTシャツを手渡した。
「ありがとう、ツアー中はTシャツが足りなくなって困るんだよ、さっそく着るよ」
というリンドレイに幸介は自分のCD「ロストソングス」を渡した。
これがリンドレイにはややこしかったのである。

LIVEは最高だった。

帰り際リンドレイは見送る金森幸介にこう言っていた。
「来てくれてありがとう。CDありがとう。あっ、それからTシャツも」
ちょっと待てリンドレイ!
Tシャツはワシがやったんや!

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